敷金の基礎知識

賃貸住宅(マンション・アパート)と敷金
敷金とは、借主(入居者)が貸主(大家さん)に対して、入居から退去までの間に発生した「未払い債務(家賃・管理費・共益費・光熱費など)」、「損害賠償債務(賃貸借物件の設備を壊したなど)」、「原状回復費用(ハウスクリーニング費用など)」の債務を保障するために契約時に預けるお金のことです。


ですので退去時に、「未払い債務・損害賠償債務・原状回復費用(特約などで定められている場合)」を差し引いて残額があれば貸主(大家さん)は借主(入居者)に対して速やかに返還しなければなりません。


ただ敷金については国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という指針が出されていますが、強制力はなく(あくまでも目安)、法律(民法)で特に定められているわけではありませんので、地域や慣習によって捉え方はさまざまなため、賃貸借契約においては借主(入居者)と貸主(大家さん)の間でもっともトラブルが生じやすい部分なのです(最近ではテレビや雑誌などでも頻繁に特集が組まれてますね)。


敷金は基本的に不動産管理会社ではなく、貸主(大家さん)に預けているお金なので、いくら不動産管理会社に対して返還請求しても貸主(大家さん)が応じなければ返還してもらえませんのでご注意を。


借主(入居者)が家賃を滞納していたなど、貸主(大家さん)に対して未払い債務が合った場合でも、借主(入居者)側から「滞納家賃(未払い債務)は敷金から差し引いください」といった権利は認められておらず、仮に貸主(大家さん)が敷金から滞納家賃分を充当した場合でも、借主(入居者)は不足した敷金分を支払わなければなりません(契約書には「敷金が不足した場合、賃借人(入居者)は○日以内に不足額を差し入れなければならない」などといった項目があると思います)。


 敷金のルールを明文化-民法改正



敷金は民法によって明確に定められているわけではなかったので、貸主、借主双方にとって難しい問題で、国民生活センターへの相談数は毎年1万件超と、敷金返還トラブルが後を絶ちませんでした。


確かに国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」という指針が出されていましたが、これらには法的な強制力がありませんでした。


そこで2017年4月に衆議院本会議(2017年5月に参院本会議でも)民法の規定を見直す改正法案が可決、成立し、民法が大改正されることとなりました(施行は2020年を予定)。


これによりトラブルとなりやすかった敷金について、また現状回復義務についてもルールが明文化されました。


ただ「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)」、「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(東京都)」に沿った内容となっており、今までの指針から法的に明記される形になったわけです。


敷金に関わる主な民法改正点は以下の通りです。


◎敷金と名称を統一


地域によって、敷金、保証金などと名称が統一されていませんでしたが、改正、施行後は敷金と名称が統一されます。


◎敷金は賃借人の債務の担保


敷金は借主(賃借人)の未払い賃料等、債務の担保と明文化し、貸主(賃貸人)は未払い賃料等、借主の債務があれば敷金から差し引くことができる。


これに伴い敷金が不足した場合、借主は不足分を一定期間内に貸主(賃貸人)に差し出さなければなりません。


ただ賃貸借契約期間中に、賃料の支払いが難しいなどを理由に、借主(賃借人)から貸主(賃貸人)に対して、敷金から今月分の賃料を差し引いて欲しいなどと請求することはできません。


◎原状回復義務


借主(賃借人)の責任ではない損耗(通常使用による損耗や経年劣化)は原状回復義務はないが、特約で別段の定めをすることは可能。


つまり、借主(賃借人)の故意、過失による損耗がなければ、原状回復義務はないので、賃貸借契約終了時に未払い賃料等がなければ原則として(特約がなければ)敷金は全額返金されるということです。


ただ特約(公序良俗に反しない特約)で別段の定め、つまり借主に通常損耗や経年劣化分を負担させる特約は有効とされています。


実際問題、昨今の賃貸借契約でも特約として「ハウスクリーニング費用は借主負担とする」などとなっていることが多く、この特約自体は改正後も有効の可能性が高いです。


賃貸借契約の特約が有効か無効かは、借主がどこまで負担するのかを具体的に明記する必要があるので、民法によりルールが明文化されるといっても、まだまだトラブルは絶えないかもしれません。


いずれにしても契約時に特約の内容をしっかりと確認することは非常に重要ですね。


◎修繕義務


部屋の装備等が破損した場合、借主(賃借人)の故意、過失がなければ、修繕義務は貸主(賃貸人)が負います。


また借主は、貸主の修繕義務があるにもかかわらず相当期間、貸主が修繕しない場合や、部屋が緊急性の修繕を要する状況の場合などは借主が修繕し、その修繕費用を貸主に請求できます。


 敷金は何ヶ月分?



敷金は地域によってある程度「何ヶ月分」かの相場が決まっており、東京都内などの場合、敷金は普通「賃料の2ヶ月分」となっていることが一般的ですが、物件によっては「3ヶ月分、0ヶ月分(敷金なし)」などの物件もあります(敷金なしの物件はその他の名目でお金を徴収する場合がありますので注意が必要です)。


また礼金は交渉次第で「2ヶ月分⇒1ヶ月分」などに下げてくれる可能性がありますが、敷金は貸主(大家さん)からすれば債務の保証を得るためのものですので、交渉によって下げてくれることはまず期待できませんし、交渉は避けたほうが無難です。


 敷金の返還率は?



敷金については度々テレビや雑誌などで特集が組まれるようになってきたので、借主(入居者)の知識の向上、貸主(大家さん)の考え方が変わってきたこともあってか、昔に比べればかなり返還されるようになってきましたが、それでも契約時に預けた敷金が全額返還されることはかなり稀です(民法改正前)。


一般的に2年契約の賃貸住宅(マンション・アパート)に住んでいた場合で、2年契約満了して退去する場合は、「敷金の約半分ほど」返還されるのが平均だといわれています。


もちろん敷金は、「地域(慣習)・居住年数・居住内容・貸主(大家さん)の考え・契約(特約)内容」などによって、どれほど返還されるのかが大きく異なってきますが、まだまだ借主(入居者)に「原状回復費用(ハウスクリーニング費用など)」を負担させているケースが多いのが原状なのです。


民法改正後は、特約がなく、借主(賃借人)の故意、過失がない場合は通常使用による損耗や経年劣化の原状回復義務、つまり借主はハウスクリーニング費用を負担する必要はありません(特約で具体的な負担割合を明記されていれば有効の可能性が高いです)。


 家賃の増減があった場合



契約更新時などで、賃料の増減があった場合は、当然、敷金の額も増減することとなりますので、家賃が増減した場合は、必ず敷金の増減についても確認しておきましょう!


契約内容によっては賃料が増減した場合でも、敷金について変更がない、といった場合もあります。


 退去時の立会い確認



退去時の立会い
賃貸住宅を退去する場合(引っ越し時)、普通、貸主(大家さん)、または不動産管理会社の立会いがあると思います。


退去時の立会いは、賃貸住宅の「汚れ・損耗・破損」等を双方が確認し、入居時の状況と、退去時の状況を比較し、原状回復義務の負担割合について明確にするために行うのですが、不動産管理会社、または貸主(大家さん)によっては退去時の立会いを行わないこともあり、後日トラブルとなることがありますので、必ず立ち会ってもらい、「汚れ・損耗」等を確認してもらわなければなりません。


立会い確認後、不動産管理会社(大家さん)から原状回復義務等について、書面に署名捺印を求められることがありますが、その書面の内容を確認し、納得した場合のみ署名捺印するようにしましょう。


ただ通常は立会日に具体的な数字は提示されないことがほとんどで、後日、不動産管理会社(大家さん)から詳しい明細等で説明があると思いますので、納得できない場合、または契約(特約)内容と相違がある場合は、話し合い、妥協点を探していくこととなります。


 敷金の返還時期



敷金は、「未払い債務・損害賠償債務・原状回復費用」を差し引いて残額があれば、借主(入居者)に返還されますが、返還される時期は、退去時の立会い時ではなく、後日、借主(入居者)指定口座へ振込み等で返還されるのが一般的です。


返還時期については契約書等に、


「賃貸人(大家さん)は賃借人(入居者)が賃貸借物件の明け渡しを完了してから30日以内に敷金を賃借人(入居者)に返還する」


などとなっていると思いますので、契約書を確認しておきましょう。


もしも敷金の返還時期についての記載がない場合は、必ず契約時に確認し、その項目を追加してもらいましょう(一般的には1-2ヶ月となっていることが多い)。


 保証金?敷引き?償却?



東京をはじめ、全国的に賃貸借契約時には「敷金」を預けることが一般的ですが、関西、九州の一部では敷金ではなく、「保証金」という名称のお金を預けることが普通です(民法改正後、名称は敷金と統一される)。


名称こそ違いますがその性質は非常に似ており、保証金と敷金の違いは以下の通りとなります。


東京などでも事務所等の契約の場合は、敷金ではなく、保証金を預けるのが一般的です。


■退去時に敷引き(償却)されて返還される


敷金の場合、「未払い債務・損害賠償債務・原状回復費用」を差し引いて残額があれば、借主(入居者)に返還されますが、保証金の場合、「敷引き(償却)」と称して、保証金のうち○ヶ月分、○%など、一定額を無条件で差引かれて返却されることとなります。


敷金方式の場合、原状回復義務を貸主(大家さん)、借主(入居者)どちらが負担するかでトラブルとなることが多いのですが、保証金の敷引き(償却)方式の場合、契約時にあらかじめ負担額を決めてしまうことによって、退去時のトラブルを防げるといった、とても合理的な?方式だといえるかもしれません。


要するに、


「退去時に部屋がキレイでも汚くても契約時に定めた償却額以外は支払う必要がない」


ということです(賃料不払い債務、設備を壊したなどは除く)。


保証金を預ける場合は、契約時に「償却額」を必ず確認しておきましょう!


 貸主(大家さん)が変更になった場合



物件には抵当権が設定されていることが普通で、もしも抵当権が行使され、貸主(大家さん)が変更になった場合、旧貸主(大家さん)に預けていた敷金はどうなるのか?が問題となります。


■一般の売買で貸主(大家さん)が変更になった場合


売買で貸主(大家さん)が変更になった場合は、敷金は旧貸主から新貸主に引き継がれることとなりますので、例え新貸主から敷金を預けて欲しいといわれても応じる必要はありません。


■競売で貸主(大家さん)が変更になった場合


競売で貸主(大家さん)が変更になった場合、従来までは旧貸主に預けていた敷金は、新貸主に引き継がれていましたが、2004年4月1日の民法の改正により、旧貸主から新貸主へ敷金は引き継がれなくなりましたので、新貸主から敷金を預けて欲しいといわれれば応じるしかないのです。


もちろんこの場合でも、旧貸主に対して敷金を返還するように要求しなければなりませんが、自己破産等で物件が競売にかけられたような場合、敷金を取り戻すのはかなり大変だと思いますが。。


 敷金返還請求



敷金返還請求
もしも敷金について貸主(大家さん)、不動産管理会社と考えの相違等があった場合でも、法的手段を取る前に、まずは十分な話し合いをすることが大切です。


敷金問題は貸主(大家さん)、借主(入居者)双方に言い分があるのは分かりますが、双方が話し合いで歩み寄り、妥協点を探り、解決していくことがもっとも理想的な方法なのはいうまでもありません。


また話し合いをする際でも、社会人として常識のある言動をしなければなりません。


感情のまま、こちらの言い分だけを一方的に言っても、解決するどころか、相手も感情的になってしまい、より問題解決が困難になってしまうこともあるからです。


もちろん話し合う際でも、最低限の知識を身に付けておかなければ足元をすくわれてしまいますので、当サイトの情報が少しでも参考になればと思います。


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