敷金の特約

畳やクロス(壁紙)などは通常、次の入居者が気持ちよく住めるように、入居期間に関係なく張り替えることが多く、また室内のハウスクリーニングも借主(入居者)の方がどんなに掃除して引越した場合でも、次の入居者のために貸主(大家さん)は専門の業者に依頼してハウスクリーニングしてもらうことが一般的です。
そこでこのような場合、畳やクロス(壁紙)の張替え費用、室内のハウスクリーニング費用は貸主(大家さん)、借主(入居者)どちらが負担するのかが大きな問題となり、 国土交通省から指針されている「⇒原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、借主(入居者)の故意、過失、善管注意義務違反等がなければ貸主(大家さん)負担と考えられており、民法改正後も(施行は2020年を予定)このガイドラインに沿う形となっています。
繰り返しますが借主(入居者)の故意、過失、善管注意義務違反等がなければ、畳やクロス(壁紙)の張替え費用は貸主(大家さん)負担で、仮に借主(入居者)の故意、過失等があった場合でも、「経年劣化と通常損耗(自然損耗)」を考慮した金額が借主(入居者)負担となるのです。
民法によれば、「貸主(大家さん)は家賃という対価を得ている以上、借主(入居者)に対して使用収益させる義務を負っており、貸主(大家さん)は使用収益させるための修繕義務を負っている」となっています。
しかし特約等で、「退去時に行うハウスクリーング代は借主(入居者)が負担する」など、本来、貸主(大家さん)が負担すべき修繕義務を借主(入居者)に負担させるといった契約(特約)が多く、この特約が有効かどうかについてトラブルとなることが多いのです。
契約自由の原則 | |
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民法によれば、賃貸借契約に限らず契約というものは双方が合意したものは原則、有効ですが、双方が合意していたからといってすべてを有効とすると、立場の弱い(賃貸借契約の場合は借主)側に不利な契約をすることがありますので、「公序良俗に反する契約」、「借主に不利な特約」は無効だと考えられています。
■公序良俗に反する契約
公序良俗に反する契約とは、殺人を依頼して、成功報酬に金銭を支払うような契約のことですが、賃貸借契約において、公序良俗に反する契約とはどのようなものなのでしょうか?
例えば・・・
・賃料を1ヶ月でも滞納したら1,000万円支払う。
・理由を問わず、貸主(大家さん)が退去を命じたら即刻、退去しなければならない。
など・・・
要するに、貸主(大家さん)、借主(入居者)双方が合意していたからといって、通常の契約と照らし合わせて無茶苦茶な契約内容は無効ということなのです。
では敷金についてはどうでしょうか?
例えば・・・
「退去時に行うハウスクリーング代は借主(入居者)が負担する」
という特約があった場合、公序良俗に反する契約といえるでしょうか?
答えは「No」です。
確かに借主(入居者)にとって不利な契約のようにも思えますが、明らかに無茶苦茶な契約内容とはいえませんから、公序良俗に反する契約とは言えず、仮に裁判で争った場合でも有効と判断される可能性が高いです。
■借主に不利な特約
どのような契約内容でも有効とすると、立場の強い側が有利な契約内容とすることが多くなりますので、民法によれば、例え双方が合意していたとしても、「借主に不利な特約は無効」とされています。
では「借主に不利な特約」とは具体的にはどのような特約のことでしょうか?
例えば・・・
・更新できない(定期借家契約は除く)
・更新料1年分
など・・・
しかし「借主に不利な特約は無効」といっても、実際には借主(入居者)がその部屋を住む権利が著しく害されるような契約は無効ということですので、上記の例と同じく、
「退去時に行うハウスクリーング代は借主(入居者)が負担する」
というような特約があった場合でも、借主(入居者)の住む権利を著しく害する特約とは言えず、双方が合意している以上、有効と判断される可能性が高いと思います。
敷金の特約 | |
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すべての特約を有効とすると、借主(入居者)に不利な特約を押し付けられる可能性がありますので、過去の判例によると、特約の有効性については以下のすべてを満たしていなければならないとされています。
1:暴利的でなくかつ客観的、合理的な理由が存在する。
2:借主(入居者)がその特約の内容について理解している。
3:借主(入居者)が負担することを了承している。
2及び3は、賃貸借契約書、重要事項説明書等に特約内容が分かりやすいように具体的、かつ明確に記載されており、契約時に説明があり、借主(入居者)の署名捺印があれば、借主(入居者)が理解し、了承していると考えられます。
問題は1の、「暴利的でなくかつ合理的な理由が存在する」についてですが、この判断は難しい場合が多く、例えば、借主(入居者)がまったく掃除をせずに退去した場合などは、「合理的な理由が存在する」に該当する可能性が高くなると思います。
いずれにしても双方が合意した特約等があれば原則、有効であることを理解し、契約時に必ずどのような特約があるのかを確認し、特約があった場合は負担割合などを確認し、不明確な負担割合となっている場合は退去時にトラブルとなることが多いので、借主(入居者)がどこまで負担するのかを明確にしてもらい、納得できるまで話し合い、納得してから署名捺印するようにしましょう!
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